今回はマーベル・シネマティック・ユニバースの新作、「エターナルズ」を観に行きました!
本作の監督クロエ・ジャオが製作しアカデミー賞を受賞した「ノマドランド」がお気に入りの私にとって、その監督がヒーローものを撮るなんて全く想像できませんでした…
物語のイメージもあまりつかめない中観た本作でしたが、今までにない素晴らしいマーベル作品だったと思います。
本作は人間を太古から見守ってきたエターナルズという集団が、未曾有の地球の危機に立ち向かうという作品。
愛や個人の葛藤や選択にフォーカスした本作は、今までのマーベル作品とは一線を画す、とてもエモーショナルで余韻を残す傑作でした。
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「エターナルズ」の基本情報
タイトル:「エターナルズ」
原題:「ETERNALS」
おススメ度:★★★★★★★★☆☆8/10
個人的な評価:★★★★★★★★★☆9/10
公開年:2021年
上映時間:156分
製作国:アメリカ
監督:クロエ・ジャオ
製作:ケビン・ファイギ ネイト・ムーア
製作総指揮:ルイス・デスポジート ビクトリア・アロンソ ケビン・デラノイ
「エターナルズ」のキャスト
セルシ:ジェンマ・チャン
エイジャック:サルマ・ハエック
イカリス:リチャード・マッデン
キンゴ:クメイル・ナンジアニ
ファストス:ブライアン・タイリー・ヘンリー
スプライト:リア・マクヒュー
マッカリ:ローレン・リドロフ
ドルイグ:バリー・コーガン
ギルガメッシュ:ドン・リー
セナ:アンジェリーナ・ジョリー
本作はキャストとキャラクターの組み合わせが秀逸でした。
実際、アンジェリーナ・ジョリーによると、自分の演じるキャラクターについて聞いた際、クロエ・ジャオ監督は「まず、あなたについて教えてほしい」と答えたそうです。
つまり、キャストの内面をしっかり掘り下げた上でキャラクターを作り出していったんですね…
「エターナルズ」のあらすじ
遙かな昔から地球に存在し、7000年もの間、陰から人類を見守ってきたエターナルズ。最凶最悪の敵サノスによって半分が消滅させられた全宇宙の生命は、アベンジャーズの戦いによって復活したが、その時の強大なエネルギーによって新たな脅威が誕生し、地球に迫っていた。その脅威に立ち向かうべく、これまで身を潜めていたエターナルズが再び集結する。
(映画.comより引用)
「エターナルズ」のネタバレ無し感想
壮大なストーリーと雄大な自然を写した美しいカットの数々、そして魅力的なキャラクター達。各登場人物の内面を深堀した静かなヒーロー映画。
「ノマドランド」でアカデミー賞を受賞したクロエ・ジャオ監督の作品とだけあって、キャラクターの内面について深掘りした静かな作品に仕上がっていました。
今回はエターナルズという新たなヒーロチームの物語であり、なんとこのメンバーは10人もいます。
一本の映画でこの10人それぞれにフォーカスし、キャラクターとして魅力的な物に昇華させられたのはやはり監督の手腕を感じました。
また、監督の色を感じた点としては、雄大な自然の中でのシーンが多かった事もあげられます。
エターナルズは7000年間も人間を見守ってきたという設定と、地球のみならず宇宙にも関わる壮大な物語の本作を、雄大な自然の風景で表していたと思います。
グリーンバックによる合成ではなく、実際に現地に行って撮影したシーンの数々はとても美しかったです。
そして、やはりヒーロー映画ということで、戦闘シーンも非常に格好良かった!
エターナルズは個人個人で持っている能力が違うのですが、その各能力を活かしてチームワークで敵と戦うシーンにはシビれましたね…
全く違う能力がパズルのピースみたいに綺麗にはまっていく戦い方には、今までのマーベル作品にはない魅力を感じました。
そして、本作の最も大きい特徴が強いメッセージ性だったと思います。
まず、近年の多様性を重んじる時代に沿って、エターナルズのメンバーも多種多様な人物がいる点。
人種はもちろんのこと、障害を持っていたり心に病を抱えていたり、同性愛者だったり、様々なバックグラウンドを持つキャラクターが登場していました。
しかも、彼らのそういった違いについて、殊更に表現するのではなく、とても自然な形で映し出しており、ここで説教臭くならないのは流石だなと思いました。
また、各個人間での考え方の違いについて、すぐに戦うのでは無く、話し合いから進めていく点で、現在に生きる私たちに必要なことを示してくれているような気がしました。
ここからはネタバレ有りの感想になります!
「エターナルズ」のネタバレ有り感想
1. 10人それぞれのキャラが素晴らしい
新たなキャ
ラクターが1度に沢山出てくると、名前を覚えるのも難しいですよね。
でも、本作は一人一人のキャ
ラクターが丁寧に描かれていたので、映画が終わる頃には
全員の名前が言えるようになってました!
これには、驚きましたね。
なので、ここでは一人一人のキャ
ラクターの感想を書いていきたいと思います!
1. エイジャック
能力:治癒
エターナルズのリーダー的存在で、皆のメンター的なポジションも務めていたと思います。
とても思慮深く、母親のような優しい人物として描かれていました。
ただ、
セレスティアルズからの命令「地球での人間の人口を増やし、その人間と地球を犠牲にして新たな
セレスティアルズを誕生させる」を唯一知っている為、それに関する悩みも抱えていました。
エターナルズのリーダーで
セレスティアルズの忠実な部下ですが、人間に対する愛も持ち合わせており、エターナルズをどう導けばいいのか、そこで揺れ動いていたのが印象的でした。
2. セルシ
能力:物質を他の物質に変換する
本作の主人公。
同じエターナルズである
イカルスと別れた後、人間と恋愛関係になり、人間に対して深い愛情を持っているキャ
ラクターでした。
エイジャックの死後、エターナルズのリーダーになり
セレスティアルズの真の目的を知ったことで、深い絶望を感じます。
しかし、人間を守ることに躊躇せず、何とか打開策を探す姿には応援したくなりましたね。
彼女もエイジャックと同じくとても静かなキャ
ラクターとして描かれており、今までのヒーローとは一線を画すような独特な雰囲気が魅力的でした。
能力:飛行、目からビーム
エターナルズの中で最も強力なメンバー。
劇中でもイジられてましたw
エターナルズのサブリーダー的なポジションで、唯一エイジャックから
セレスティアルズの真の目的について知らされていました。
ただ真面目で、人間にもそこまで入れ込んで無かった彼は、
セレスティアルズ側の目的を達成しようとします。
そこで、人間を守りたい他のメンバーと衝突してしまうんですよね。
目的達成のためには同じエターナルズのメンバーでも容赦なく排除する様から残酷なキャラに思えましたが、
エイジャック殺害後にはその辛さから慟哭したり、自分を慕うキンゴに対し「(エイジャックを殺した)自分を買い被りすぎだ」と言ったり
エターナルズに対する愛はしっかりと持ち合わせていました。
また、人間を守ろうとするセルシをも手にかけようと思ったが、彼女に対する深い愛があるため彼女を殺せず、最終的には人間側に手を貸すシーンには何とも言えない悲しさがありました。
しかも、最終的には自分の行いを責めてか、本来の目的を達成出来なかったためか、彼は自ら太陽に突っ込み死んでしまいます。
エターナルズのメンバーの中で最も悩みを抱えているように描かれており、敵役ではありましたが、かなり共感出来るキャラでした。
4. キンゴ
能力:指や手からエネルギー弾を撃てる
イカリスに対し絶大な信頼を置いており、彼にだったら絶対に付いていくとまで言っていました。
コメディ担当でもあったので、セリフの端々でクスッと笑わせてくれました。
そして、なんと言っても戦い方がメチャクチャカッコイイ!!
指をピストルの形にしてそこからエネルギー弾を撃つなんて、
中二病心をくすぐりすぎました…
5. ファストス
能力:発明
頭脳明晰で所謂博士的なポジションのキャラです。
太古から彼が人類に発明をもたらしてくれたおかげで、人間社会が進化してきた設定になっています。
ただ、広島の原爆投下を目の当たりにし、人類の愚かさに絶望。
自らが人類に発展をもたらしたことを強く後悔していました。
しかし、現代では男性の恋人との間に子供ももうけ、幸せに生活しており、人間への愛を取り戻していました。
彼は、自分の家族を守るために人類を守る選択をしており、そういった意味ではとても王道な考え方を持つキャラだったと思います。
6. スプライト
能力:幻覚や幻影
子供の姿をしたメンバー。
見た目に似合わない辛辣な発言をしますし、このキャ
ラクターも前半はコメディメンバ
ーでしたね。
ただ、他のメンバーには無い悩みを抱えていました。
それは自分だけ見た目が子供なので、人間の世界に馴染みづらく、恋愛もできないという事。
かつ、彼女は
イカリスのことが好きなんですが、見た目が子供のため恋愛対象にはならず、彼はセルシと恋仲になってしまいます。
このことから、他の大人メンバー、特にセルシに対しては嫉妬心を持っており、生きづらい今の世界にも不満を抱えているため、
イカリスと共に地球の滅亡に手を貸そうとします。
このキャラは本当に可哀想でした…
7000年も生きているのに見た目が子供の為、思うように生きられず、恋愛もできない。
彼女が
セレスティアルズ側につくのも納得がいきました。
7. マッカリ
能力:超速移動
エターナルズのスピードスター。
聴覚障害があり耳は聞こえませんが、その分空気などの振動を敏感に感じ取れるため、高い感知能力を持っています。
天真爛漫で明るく少女のような雰囲気が可愛く、ドルイグと仲が良いのもめちゃ萌えました。
超速移動を駆使した攻撃もめちゃくちゃ格好良くて、魅力的でしたね。
8.ドルイグ
争いを止めたり、相手を攻撃させたり、自分を戒めさせたり、意のままに人を操れます。
正直チート過ぎますね。
見た目も冷たい印象で一見敵役に見えますが、実は人類に対する愛を1番強く持っているキャラというのが魅力。
心を操れるだけあって、人間の心理についての理解は非常に深く、彼らが争いを起こすことに失望しながらも、何とか良い方向に持って行こうとします。
しかし、エターナルズは基本的には人間の争いには介入してはいけないので、争いを目の前にしてもドルイグは自分の能力を使えません。
ここに、大きなもどかしさを感じ、自分の行いが本当に正義なのか、悩みを抱える。
人間に対し、1番複雑な感情を持っているキャ
ラクターなので、他のメンバーとは一線を画す雰囲気がありました。
なのにマッカリとはめちゃ仲良いっていうのは、もうギャップヤバすぎましたね。
能力:怪力
肉弾戦が得意なエターナルズのファイター。
戦い方は豪快そのものでしたが、内面的にはとても大らかで優しく、太陽のようなキャラでした。
皆を笑わせたり、料理を作ってくれたり、時には深い言葉をかけてくれたり、マジでいい人でした。
セナが精神的に不安定になっても自分が世話を見ると言って彼女の近くに居続けてくれるなんて、もう、素晴らしすぎます。
彼が途中ディヴィアンツに命を奪われてしまうのは本当に残念でしたが、彼の死がセナに大きな変化をもたらし、死んでも尚、セナを見守ってくれている感じがして感動しました。
10. セナ
能力:武器を生み出す、高い戦闘能力
エターナルズの中で1番謎で、不安定なキャ
ラクターでしたが、非常に魅力的でした。
エターナルズのメンバーとはいつも少し距離を置いており、戦闘に明けくれる様子からかなり危うい雰囲気が。
実際、精神的に不安定になり突然仲間を襲ったりするようになってしまいます。
これに対し、
ギルガメッシュが世話をしてくれるという事で丸く収まったのですが、本人はよりエターナルズの他メンバーと距離を置くようになります。
しかし、地球の危機が分かり再び再開した際には、食卓を囲みながら楽しく談笑している場面もあり、心の奥底で家族のような繋がりを持っているのが印象的でした。
途中で
ギルガメッシュが命を落としてしまう事で、彼女は深く傷つきますが、彼の言葉などに背中を押され、徐々にほかのメンバーとも関わっていき、地球を守るために
イカリス達と対立します。
この繊細な役どころをアンジェリーナジョリーは完璧に演じきっていて、改めて彼女の演技の素晴らしさを感じることが出来ました…。
2.善悪のない争い
本作では、絶対的悪となる存在は居ませんでした。
セレスティアルズは自然の流れの通りに、新た宇宙を創造し、生命を誕生させるために地球を犠牲に。
イカリスは自分たちが作られた理由である、
セレスティアルズの目的を果たすために。
スプライトはいつまでも子供の姿である自分の運命を呪い、好意を寄せる
イカリスと新たな世界で自分の人生を歩むために。
ディヴィアンツのクロは今までエターナルズに倒されてきた仲間の復讐を果たすために。
全員が己の考えや信念を元に行動を起こしており、悪意という悪意が無いんですね。
また、意見では対立する
イカリスに対しても、他のエターナルズのメンバーはエイジャックを殺害したことを
咎めはするものの、彼の考え方自体を否定するようなことはしませんでした。
この誰かを悪の立場とするやり取りが無い点が個人的に素晴らしかったと思います。
最近、多様性を重要視する風潮が世間にはありますよね。
誰もが生きやすい環境を作っていく事は大切ですし、この風潮自体は良いと思います。
ただ、少し気になる点もあります。
例えば差別的思考を持つ人を過剰にたたいて炎上させたりすることです。
確かに彼らは多様性を否定するような考え方の持ち主ですが、それを完全に否定する事もある意味で多様性を認めていないと思うんです。
私は多様性とは、「各個人の考え方の違いを認め、互いに許容しあうこと」だと思うんです。
つまりは人の考え方に善し悪しをつけないってこと。
この点で誰かを悪役にしない本作はこの自分の考えに近い多様性を描いていたと感じました。
まとめ
いかがだったでしょうか?
本作はエターナルズそれぞれの内面に焦点を当てた、静かで、そしてエモーショナルな作品でした。
雄大な自然を背景に巻き起こる、壮大な物語に心を奪われること間違いなしの作品だったと思います。
宇宙をも巻き込み、今後のMCUがどのように展開していくのかとても楽しみです!
それでは読んでくださりありがとうございました!